吉田さらさのイベントとお知らせ

寺と神社の旅研究家、吉田さらさの新刊、雑誌記事、講座、ツアー、イベントなどの情報です。

新刊「神様と出会う神社の旅 奈良編」

出る出ると言いながらなかなか出なかった、オバケのような新刊が、やっと出ました。
神様と出会う神社の旅 奈良編(青林堂 ¥1,890)



本来ならば、2月に出る予定だったのに、震災その他もろもろの事情により、4カ月も遅れてしまいました。「いつ出るのか?」とお問い合わせくださった皆様、たいへんお待たせしました。

この本のお勧めポイント
古事記日本書紀に出てくる神様の基本がわかる。
②神話と神社、古代の奈良、ひいては日本の始まりがどんなふうであったのかがわかる。
③奈良の祭がたいへん興味深い歴史を秘めていることがわかる。
④古代の日本人がどんなふうに神様に祈ってきたか、そしてそれは、現代にどのように伝承されてきたかがわかる。
⑤奈良を本当に知るためには、お寺ばかりでなく神社にも行くべきだということがわかる。

今回の本は、いつものように、わたしがひとりで好きな場所をふらふら歩いて書いたエッセイではなく、神社本庁さん、奈良県庁観光課さん、有名旅館のご主人など、たくさんの有識者のアドバイスとバックアップを得て取材に回ったので、普通の旅行者は見られないものも見せていただいたり、入れないところに入れていただいたりしています。普段のわたしは、「取材という名の特別扱い」をあまり好まないので、事前に取材をお願いすることは少ないのですが、今回は、わたし自身も、より深く神社の方々のお話をうかがいたいと思ったので、多くのところで、事前にアポを取った取材をしています。

そのため、いつものような個人的感想や旅の道草情報は少なく、ガイドブックのような形式になっています。しかし、普通のガイドブックには載っていない、より深く詳しい解説をつけました。

取材は昨年の秋から初冬に行いました。
その時期の奈良の神社ではさまざまな祭が行われていたため、いくつか参列させていただきました。氏子さんしか参加できない祭の準備の取材をさせていただいたりもしました。その結果、わかったことは、

「奈良の文化は京都に都が移った時点で断絶し、京都の文化のように現代まで伝承されていない」という定説は間違いである

ということです。

京都は平安遷都以来、ずっと都であり続けたので、貴族、武士、そして庶民の間で生まれた数々の文化が伝承されているが、奈良は平安遷都以降はさびれたため、古い文化は伝承されていない。

これは、奈良と京都を比較する際に、一般的によく言われることです。

しかし、奈良の神社を歩いてみると、そこには、平安遷都以前、あるいはそれ以降から続く伝統がいくらでも残っていることがわかります。特に祭が面白いのですが、京都との違いは、奈良の神社は、祭を、観光客を呼ぶために利用しないということ。全国的に宣伝などをしないため、地元の人しか知らない祭も数々あるのです。

考えてみれば、それはあたり前のこと。
祭は、もともと外来の人に見せるためのものではなく、その神社がある地域の人々が、神様をおもてなしするためのものですからね。

京都の祇園祭葵祭は、実は、応仁の乱のあと、しばらく中断していますが、奈良の春日大社のおん祭は、1136年に始まって以来、一度も途切れることなく、八百七十有余年も続いているのです。

おん祭は、12月半ばの深夜に行われる、実に厳粛な祭で、平安時代の雅楽や舞楽もたくさん奉納されます。これは、「平安の都」である京都でも、ちょっと見られないものです。

そして何よりも、奈良には京都よりはるかに古い歴史があり、奈良がなければ京都もなかったかも知れないのです。

京都ももちろんいいけれど、日本の文化や歴史に興味があるなら、奈良をもっとよく知って欲しい。これは前からずっと思っていたことですが、今回の本の取材を通して、ますます強くそう思うようになりました。